中央管理に依存しない、RWA連携型の次世代ステーブルコイン
分散型ステーブルコインが描く「安定の未来」
2026年1月時点の重要なお知らせ
2024年9月、MakerDAOは「Sky Protocol」へとリブランドし、DAIは新ステーブルコイン「USDS」へのアップグレードが可能となりました。しかし、DAIは「レガシートークン」として引き続き存在し、ユーザーは任意でUSDSへ移行できる選択制となっています。
2026年1月現在も、DAIは主要取引所で取引可能であり、時価総額約44億ドル(暗号資産ランキング40位以内)を維持しています。本記事では、分散型ステーブルコインの先駆者として、依然として重要な役割を果たし続けているDAIの仕組みと価値について解説します。
USDSに関する解説記事はこちら
暗号資産市場において「安定した価値」を持つ通貨は、DeFi(分散型金融)の基盤となる存在である。
その中でも、DAI(ダイ)は特別な位置を占めている。
DAIは、企業が発行するUSDTやUSDCとは異なり、分散型プロトコル「MakerDAO(現Sky Protocol)」によって運営されるステーブルコインである。
スマートコントラクトによって自律的に発行・管理され、中央管理者が存在しない安定通貨として世界中のDeFiで利用されている。
1. DAIとは何か ― 分散型ステーブルコインの原型
DAIは、米ドルに連動する価値を持つ暗号資産(ステーブルコイン)である。
しかし、その仕組みは他のステーブルコインとは根本的に異なる。
DAIの3つの特徴
- 発行主体: 企業ではなく分散型組織(MakerDAO/Sky Protocol)
- 担保構造: 暗号資産+現実資産(RWA)
- 管理方法: スマートコントラクトによる自動制御
つまり、DAIは「誰も止められない安定通貨」を目指して設計された、
完全オンチェーンのステーブルコインである。
2. DAIが解決しようとした課題
中央集権型ステーブルコインの限界
USDTやUSDCなどのステーブルコインは便利だが、以下のような課題を抱えている。
中央集権型の課題
- 発行企業の信用に依存
- 規制・凍結リスク
- オンチェーンでの透明性不足
これらは、分散型金融(DeFi)の理念と相反する構造となっている。
MakerDAOの革新的アプローチ
MakerDAOはこの問題を根本から見直し、
「信頼ではなく仕組みで安定を作る」という新しいアプローチを採用した。
3. DAIの仕組み ― 担保とスマートコントラクトによる安定化
DAIは、担保資産を預けることで発行される。この仕組みは「過剰担保型」と呼ばれ、常に発行されたDAI以上の価値を持つ資産が担保として保管される。
DAIは、誰でも発行・管理することができ、理解することで暗号資産の運用幅が広がるため、ここでは少し詳細にこの仕組みについて解説する。
DAI発行・管理の4ステップ
担保預入
ユーザーがETHなどの暗号資産をスマートコントラクト(Vault/金庫)に預け入れる。
DAI発行
担保価値の最大66%程度までDAIを発行可能(担保比率は最低150%が必要)。
清算メカニズム
担保価値が下落し、担保比率が150%を下回ると、システムが自動的に担保を清算してDAIの価値を守る。
安定化手数料
DAIの需要と供給を調整するため、MKRホルダーによるガバナンス投票で金利(手数料)が設定される。
具体的な発行例
具体的な例として10 ETHを担保にDAIを発行するケースを紹介する。
ステップ1: 担保預入
→ ユーザーAが10 ETHを預入(1 ETH = 3,000ドルの場合)
ステップ2: DAI発行
→ 担保比率150%で発行する場合
💡 計算式: 30,000ドル ÷ 150% = 20,000ドル分のDAI
ステップ3: 価格変動と清算
→ ETH価格が2,250ドルに下落
⚠️ 清算発動
150%を下回ったため自動清算が実行される
ここの例では上限である担保の66%を発行しているが、比率を下げることで自動清算のリスクを下げることができる
担保のETH価格が下がり、自動清算のリスクが発生してきたら一部のDAIを返済することで自動清算のリスクを下げることができる
ステップ4: 担保の返還
→ ユーザーがDAIを返済すると、預けたETHが返還される
→ 返済時に安定化手数料も支払う
💡 ポイント
自動清算時の説明と重複するが、清算前に追加担保を預け入れるか、一部のDAIを返済することで清算を回避できる
安定化手数料を支払う必要があるため、投資観点では発行したDAIにより手数料を上回る資産運用を考慮する必要がある
🏛️ RWA(Real World Assets)という担保
DAIは進化の中で、RWA(Real World Assets:現実資産)が担保として組み込まれた。
国債や不動産債権など、現実世界の資産をオンチェーン化することで、DAIの安定性と持続性が大幅に向上した。
RWAは暗号資産のような価格変動リスクが低いため、より安定した担保基盤を提供する。
なぜ過剰担保が必要なのか
📊 価格変動への備え
暗号資産は価格が変動するため、担保価値が下がってもDAIの価値(1ドル)を維持できるよう、余裕を持たせている。
💰 債務超過の防止
担保価値が借入額を下回ること(債務超過)を防ぐため。過剰担保により、価格変動があっても常に「担保 > 借入」を維持できる。
🚨 清算の余裕時間
価格が急落しても、担保不足になる前にシステムが自動清算できる時間的余裕を確保するため。
担保資産の価値に基づいた安定性
4. DAIの主な活用事例(ユースケース)
① DeFiの基軸通貨
DAIは、分散型金融(DeFi)における「安定資産」として広く利用されている。
用途は多岐にわたり、レンディング、ステーキング、取引ペアなど、あらゆるDeFiプロトコルで基軸通貨として機能している。
② 決済・送金
ボラティリティが低いため、国際送金や決済にも利用可能である。
中央管理がないため、検閲耐性が高く、グローバルな安定決済手段として注目されている。
③ RWA担保モデル
MakerDAOは、国債や不動産債権などの現実資産を担保に組み込み、オンチェーン上で「現実経済と暗号経済の融合」を進めている。
これにより、DAIは単なる暗号資産ではなく、現実資産に裏付けられた分散型通貨へと進化している。
5. 中央集権型ステーブルコインとの思想的な違い
| 観点 | USDT / USDC | DAI |
|---|---|---|
| 管理主体 | 企業 | 分散型プロトコル |
| 担保 | 銀行預金・証券 | 暗号資産+RWA |
| 発行制御 | 中央管理 | スマートコントラクト |
| 透明性 | 監査報告 | オンチェーンで公開 |
この思想こそが、分散型金融の根幹にある理念である。
6. DAIの強みと課題
強み
- 完全オンチェーンの透明性
- 分散型運営による耐検閲性
- RWA導入による安定性強化
- DeFi全体での高い利用率
課題
- 一部担保にUSDCなど中央型資産を含む
- 規制環境の変化に影響を受ける可能性
- ガバナンスの複雑さ(MKRトークンによる投票制)
MakerDAOは、2024年9月に「Sky Protocol」へとリブランドし、分散性と安定性の両立を模索しながら、「持続可能な分散型通貨モデル」を追求し続けている。
なお、「Sky Protocol」へのリブランドについては次で解説する。
7. Sky ProtocolへのリブランドとUSDSの登場
DAIとUSDSの関係
- DAIは消滅していない:レガシートークンとして引き続き利用可能
- 任意のアップグレード:ユーザーは1:1でUSDSへ移行可能
- 互換性:DAIとUSDSは併存し、用途に応じて選択できる
なぜリブランドが行われたのか
Sky Protocolへの移行は、単なる名称変更ではなく、 分散型ステーブルコインを次のフェーズへ進めるための 戦略的な再構築を意味している。
- 規制対応の強化
- スケーラビリティの向上
- マルチチェーン展開の加速
- より洗練されたガバナンス構造の確立
USDSで追加された主な新機能
DAIと同一の担保メカニズムを維持
SKYトークンによる新たな報酬システム
強化されたコンプライアンス機能
マルチチェーン対応のさらなる拡充
注意点
SKYトークンによる報酬やセービングスレートの一部機能は、 米国・英国など特定の国や地域では利用制限が設けられている。 これは各国の金融規制への対応を目的としたものであり、 Sky Protocolが「分散」と「現実的な運用」の両立を目指していることを示している。
8. まとめ
DAIの役割と進化
DAIは万能ではない。
しかし、分散型金融の基盤を確立した歴史的地位は揺るがないだろう。
Bitcoinが「価値の保存」、
Ethereumが「アプリの基盤」なら、
DAIは「安定の基準」である。
そして2024年のSky Protocolへのリブランドは、新たな章の始まりを示している。
DAIがレガシートークンとして存続し、USDSが新たな選択肢として加わったことで、ユーザーはより柔軟に分散型ステーブルコインを選択できるようになった。

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